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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)2791号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴外東洋エンジニアリング株式会社が昭和五四年八月八日東京法務局に対し、昭和五四年度金第五四三五九号をもつて供託した金六六五万円の還付請求権は、控訴人がこれを有することを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係については、左に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。控訴代理人は、乙第三号証の一ないし六、第四、五号証の各一ないし四、第六号証の一、二、三、第七号証の一、二、第八号証の一、二、三を提出し、被控訴人は、右乙号各証の成立を認めた。

理由

当審も、被控訴人の本訴請求は、これを正当として認容すべく、控訴人の反訴請求は失当として、これを棄却すべきものと判断するが、その理由については、左に付加するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、これを引用する。

原判決七枚目裏四行目「物上」から同七行目「相当である。」までを「そもそも同条第一項本文の物上代位権が先取特権者を保護するため特に法の認めたものであつて、第三債務者による払渡等のなされたのちにおいては、もはやこれを行使することができないものとされていることに鑑み、単に物上代位権の対象となる債権を特定し、債務者並びに第三債務者に対しその処分を禁止して法律上これを凍結するためだけではなく、物上代位権の存在を他の債権者等の第三者に対する関係においても公示させ、取引の安全をも図るところにあるものと解するのが相当である。」と改め、同八枚目表九行目「ものであるから、」の次に、「物上代位権の対象となる債権が他から差押を受けたり、他に譲渡もしくは転付された場合と同様、同条第一項但書にいう「払渡」に該当するものというべく、したがつて、」を加える。

以上の次第で、被控訴人の本訴請求は、これを正当として認容すべく、控訴人の反訴請求はこれを失当として棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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